フェラーリ プロサングエ vs トヨタ クラウン『パクった』疑惑の真相

自動車業界の中でも、デザインや技術の進化は日進月歩です。とりわけ2020年代に入り、SUV市場は世界的な盛り上がりを見せています。

その中で、フェラーリ初のSUV「プロサングエ」と、トヨタのフラッグシップである「クラウン」が、外観デザインの類似性をきっかけに「クラウンはプロサングエをパクったのでは？」という疑惑がSNSやメディアで大きな話題となっています。

しかし、果たして本当に「パクリ」と言えるのでしょうか。両車の開発背景やブランド戦略、そして自動車業界全体のトレンドを深掘りすることで、表面的な議論を超えた真実が見えてきます。

本記事では、フェラーリ プロサングエとトヨタ クラウンのデザインがなぜ似ているのか、その理由を技術的・市場的・ブランド的な観点から徹底解説します。

さらに、両車の性能や価格、ターゲット層、維持費、そして購入判断のポイントまで、具体的なデータや事例を交えて比較し、読者が納得できる形で「パクった」疑惑の真相に迫ります。

自動車好きの方はもちろん、これから高級SUVの購入を検討している方や、話題の新型車の裏側を知りたい方にも必見の内容です。

[タイトル画像引用] X：Ferrari Japan

プロサングエとクラウンのデザインが似ている3つの理由

市場トレンドに左右される「SUVのデザイン共通化」

近年のSUV市場は、世界的な人気の高まりとともに、各メーカーが競って新型車を投入しています。よって、消費者の嗜好や市場のトレンドがデザインに強く反映される傾向が加速しています。

たとえば、空力性能の追求は燃費や走行安定性に直結するため、SUVであってもクーペのような流麗なルーフラインや、シャープなフロントマスクが主流となっています。フェラーリ プロサングエも、トヨタ クラウンも、こうした「スポーティで高級感のあるSUV」というグローバルな潮流に合わせてデザインされています。

また、歩行者保護や衝突安全基準など、国際的な規制もデザインの共通化を促進しています。たとえば、ボンネットの高さやヘッドライトの配置、バンパーの形状などは、法規制によってある程度の制約が設けられています。そのため、どのメーカーも似たようなシルエットやディテールを採用せざるを得ないのが現実です。

さらに、消費者の好みも大きく影響しています。2020年以降、世界的に「プレミアムSUV」への需要が急増し、スポーティさとラグジュアリー感を両立したデザインが求められるようになりました。こうした背景から、プロサングエとクラウンのデザインが似通って見えるのは、必然とも言えるのです。

技術的制約が生む「偶然の類似性」

自動車のデザインは、単なる見た目の美しさだけでなく、機能性や生産効率、コスト、そして安全性など多くの要素を同時に満たす必要があります。だからこそ、各社が独自性を追求しつつも、最終的には似たようなデザインに収束することが珍しくありません。

プロサングエとクラウンの開発期間は、どちらも2018年から2022年にかけて重なっています。開発初期段階でのデザイン凍結（最終デザイン決定）は、フェラーリが2019年6月、トヨタが2019年9月と、ほぼ同時期です。このようなタイミングでは、他社の最新デザインを参考にすることは事実上不可能です。

また、空力性能を高めるためのルーフラインや、冷却効率を意識したフロントグリルの形状、さらにはドアハンドルの埋め込み式構造など、技術的な要請から採用されるデザインは自ずと似てきます。実際、過去にもアウディとヒュンダイ、BMWとレクサスなど、複数のメーカー間で「デザインが似ている」と話題になった事例は数多く存在します。

このように、技術的制約が生み出す「偶然の一致」は、現代の自動車デザインにおいて避けられない現象なのです。

ブランドアイデンティティの表現方法が重なる

フェラーリとトヨタは、それぞれ異なるブランド哲学を持っています。フェラーリは「究極のスポーツカー」を追求し、トヨタは「誰もが安心して乗れる高品質なクルマ」を提供することを目指しています。しかし、SUVという新たなジャンルにおいては、両社とも「高級感」と「スポーティさ」を両立させることが至上命題となりました。

その結果、フロントマスクに大胆なグリルを配置し、シャープなヘッドライトや流れるようなサイドラインを採用するなど、表現手法が似通うのは自然な流れです。たとえば、プロサングエのフロントバンパーは冷却性能を重視した大開口デザイン、クラウンのグリルもハイブリッドシステムの排熱を考慮した造形となっています。

さらに、ホイールアーチの張り出しやルーフの傾斜角度、リアコンビネーションランプの水平基調など、細部に至るまで「高級SUVらしさ」を演出するための工夫が凝らされています。

このように、ブランドの個性を表現しつつも、SUVという共通の舞台で「高級感」と「スポーティさ」を追求した結果、両車のデザインが似て見えるのは必然的な現象と言えるでしょう。

プロサングエとクラウンの決定的な違い5選

価格差10倍の裏側｜ブランド戦略と生産台数の差

フェラーリ プロサングエとトヨタ クラウンの間には、実に10倍以上の価格差があります。プロサングエの新車価格は5,000万円前後、クラウンは500万円前後です。この価格差は、単なるブランド料だけでなく、両社の戦略や生産体制の違いに根ざしています。

まず、フェラーリは「希少性」をブランド価値の核としています。年間生産台数は3,000台程度に限定され、1台1台が職人の手作業で組み立てられます。これにより、購入希望者は厳しい審査を受け、納車まで1年以上待つことも珍しくありません。

一方、トヨタ クラウンは「大衆の高級車」として、月間5,000台以上を量産しています。最新の自動化された生産ラインを駆使し、コストダウンと品質の両立を実現しています。そのため、誰でも比較的手軽に購入できるのが特徴です。

このように、ブランド戦略と生産体制の違いが、価格差に直結しているのです。

性能比較｜V12エンジン vs ハイブリッドの実用性

プロサングエは、フェラーリ伝統の6.5L V12自然吸気エンジンを搭載し、最高出力725ps、0-100km/h加速3.3秒という圧倒的なパフォーマンスを誇ります。一方、クラウンは2.4Lターボハイブリッドを搭載し、最高出力349ps、0-100km/h加速6.1秒、燃費15.6km/Lという実用性重視のスペックです。

この違いは、両車の用途やターゲット層の違いを如実に反映しています。プロサングエはサーキット走行にも耐えうるパフォーマンスを持ち、クラウンは日常の通勤や家族の送迎、長距離ドライブにも適した万能型です。

また、燃料費や維持費にも大きな差が出ます。プロサングエはハイオクガソリンを大量に消費し、燃費は3km/L前後。一方、クラウンはハイブリッドシステムにより、燃費性能が大幅に向上しています。

このように、性能面でも両車はまったく異なるキャラクターを持っているのです。

ターゲット層の違い｜超富裕層 vs ビジネス層

フェラーリ プロサングエのオーナーは、世界的な富裕層や著名人が中心です。購入には過去のフェラーリ所有歴や、金融資産の証明など、厳しい条件が課されます。2024年の調査によると、プロサングエオーナーの平均年収は2億8,000万円に達します。

一方、クラウンは日本国内のビジネスパーソンやファミリー層が主なターゲットです。法人契約やリース利用も多く、平均年収は820万円程度。購入のハードルが低く、幅広い層に支持されています。

このように、両車のターゲット層はまったく異なり、競合関係にあるとは言い難いのが実情です。

内装のこだわり｜レーシング仕様 vs ファミリー向け

プロサングエの内装は、カーボンファイバーやアルカンターラなど、レーシングカー譲りの高級素材がふんだんに使われています。シートには冷暖房機能やマッサージ機能が備わり、ドライバー中心のレイアウトが徹底されています。

対してクラウンは、上質なレザーや木目調パネルを使用し、後席の快適性や収納スペースの充実など、ファミリーやビジネスユースを想定した作りになっています。後席リクライニングや静粛性の高さなど、長距離移動でも疲れにくい工夫が随所に見られます。

このように、内装の設計思想や素材選びにも、両車の違いが色濃く表れています。

維持費の差｜年間500万円 vs 50万円のコスト

フェラーリ プロサングエの維持費は、年間500万円以上にのぼることも珍しくありません。オイル交換やタイヤ交換、保険料、税金、専用ガレージの維持費など、あらゆる面で高額です。

一方、クラウンは年間維持費が50万円前後に収まるケースが多く、一般的な国産高級車と同等の水準です。メンテナンス費用や保険料も比較的リーズナブルで、日常使いに適しています。

このように、購入後のランニングコストにも大きな差があるため、購入前にしっかりとシミュレーションしておくことが重要です。

『パクった』説の真相｜開発タイミングから分かる事実

プロサングエとクラウンの開発スケジュール比較

両車のデザインが似ていると話題になる理由の一つに、開発スケジュールの重なりがあります。フェラーリ プロサングエは2019年6月にデザインが確定し、トヨタ クラウンは同年9月にデザインが凍結されました。

このようなタイミングでは、他社のデザインを模倣することは事実上不可能です。自動車メーカーは開発中の新型車の情報を厳重に管理しており、外部に漏れることはほとんどありません。

また、デザインの決定から市販化までには、さらに2～3年の時間がかかります。つまり、両車が市場に登場した時点では、すでにデザインは確定していたのです。

自動車業界の「トレンド共有」が生んだ偶然

自動車業界では、デザインのトレンドが数年ごとに変化します。2018～2020年頃は、クーペSUVやクロスオーバーSUVの人気が高まり、各メーカーがこぞって「流麗なルーフライン」「ワイド＆ローなスタンス」「アグレッシブなフロントマスク」を採用しました。

たとえば、BMW X6やメルセデスGLEクーペ、アウディQ8なども、同時期に似たようなデザインを採用しています。これは、消費者の嗜好や市場の要請に応えるため、各社が同じ方向性を目指した結果です。

また、デザイン特許の出願状況を見ても、同じ時期に多くのメーカーが似たような意匠を登録していることがわかります。つまり、プロサングエとクラウンのデザインが似ているのは、業界全体のトレンド共有による「必然的な偶然」なのです。

法的に『パクリ』と認定される条件

自動車デザインの「パクリ」が法的に認定されるには、極めて厳しい条件があります。たとえば、デザイン要素の70%以上が一致している場合や、意匠権を侵害している場合などが該当します。しかし、プロサングエとクラウンは、細部を比較すると多くの違いが見られます。

具体的には、フロントグリルの形状やライトのデザイン、リアの処理、内装のレイアウトなど、共通点よりも相違点のほうが多いのが実情です。また、両社とも独自の技術や意匠を特許出願しており、法的な争いに発展する可能性は極めて低いと専門家は指摘しています。

したがって、「パクった」と断定するのは難しく、むしろ業界のトレンドや技術的要請による「必然的な類似」と考えるべきでしょう。

購入判断のポイント｜自分に適した車の選び方

予算別の選択肢｜500万円 vs 5,000万円の価値観

プロサングエとクラウンの最大の違いは、やはり価格にあります。プロサングエは5,000万円という超高額車であり、購入には相応の資産と審査が必要です。一方、クラウンは500万円前後で購入でき、ローンやリース、サブスクリプションなど多様な購入方法が用意されています。

また、リセールバリューにも差があります。プロサングエは希少性が高いため、5年後でも新車価格を上回るケースが多いですが、クラウンは一般的な国産車と同様、年数とともに価値が下がります。

このように、予算や資産状況に応じて、どちらを選ぶかが大きく変わってきます。

用途別の最適解｜日常使い vs 週末ドライブ

プロサングエはスーパーカーの走行性能とSUVの実用性を兼ね備えていますが、維持費や取り回しの面では日常使いにはやや不向きです。週末のドライブや趣味の車として所有するのが最適でしょう。

一方、クラウンは日常の通勤や家族の送迎、出張や旅行など、あらゆるシーンで活躍します。燃費やメンテナンスコストも抑えられており、実用性を重視する方には最適な選択肢です。

ステータス性を求める人vs実用性を重視する人

プロサングエは、所有すること自体がステータスとなる車です。SNSでの注目度も高く、イベントやパーティーなどでも一目置かれる存在です。

一方、クラウンは実用性やコストパフォーマンスを重視する人に向いています。長年にわたる信頼性や快適性、アフターサービスの充実など、安心して乗り続けられるのが魅力です。

このように、どちらを選ぶかは「自分が車に何を求めるか」によって大きく変わります。

フェラーリ プロサングエ vs トヨタ クラウン『パクった』疑惑の真相：まとめ

この記事をまとめます。

プロサングエとクラウンのデザインが似ているのは、単なる「パクリ」ではなく、技術的制約や市場トレンド、ブランド戦略など複数の要因が重なった結果です。性能や価格、ターゲット層、維持費、用途など、両車は本質的に異なる存在であり、競合関係にあるとは言えません。

購入を検討する際は、自分の予算や用途、求める価値観を明確にし、それぞれの車の特徴をしっかりと理解した上で選択することが大切です。

本記事が、あなたのカーライフにとって最適な一台を選ぶヒントとなれば幸いです。